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カート

カートが空です

日本では、7世紀ごろまでに中国から紙の製法が伝わって以来、独特の趣をもつ紙「和紙」が作られ、さまざまな用途に使われてきました。平安中期には衣料としても利用されるようになり、丈夫で持ち運びに便利なため、僧衣や陣羽織などにも仕立てられました。自然界には人間よりうんと先に優れた製紙技術を身につけ、活用している生き物がいます。

ハチです。

ハチは個性豊かな建築家として知られ、巣の材料や形、作り方などさまざまです。日本でも身近に見られるアシナガバチは、紙で巣を作ります。

アシナガバチは、まず、植物の枝などを、がんじょうなあごで削り取り、少しずつ口の中に入れて噛み続けます。すると、植物の繊維質が次第にときほぐされ、特殊な成分が含まれた唾液と混ざり合いドロドロになります。その状態のものを気に入った場所に運び、あごと足を器用に使って薄く伸ばし、巣を作っていきます。

この工程は、植物繊維をときほぐして水に溶かし、漉いて乾燥させるという紙作りの原理と同じ。特に日本独特の手漉き和紙の工法と似ています。完成したアシナガバチの巣は和紙のような風合いで、しかも丈夫で軽く、水にも強い優れものです。

アシナガバチの巣作りは、春、冬眠から覚めた女王バチ1匹で始まります。女王バチは、1つの巣部屋が完成すると卵を1つ産みつけ、次の部屋作りに移ります。この工程を何度も繰り返し、やがて幼虫が育って羽化をすると作業に加わるので、巣は次第に大きくなります。これは、人間が製紙技術を発見する遥か昔から、受け継がれてきた技術です。

18世紀に、フランスの化学者で昆虫学者のレオミュールは、アシナガバチと同じように、スズメバチが植物繊維を使って巣を作るのを観察し、製紙に木材パルプを使うことを発案しました。植物繊維が優れた能力を備えた素材だということを、ハチが人間に教えてくれたのです。植物繊維で作られた「紙糸」を利用した生地は、最後は土に返っていく環境に優しい素材でもあります。丈夫で快適な紙糸で作られたお洒落な服があれば、どんどん身に着けてみたいものです。

参考資料:『自然の観察事典32 アシナガバチ観察事典』偕成社

 

いきものずかん アシナガバチ

スマートな体と長い脚が特徴の、スズメバチ科のハチの仲間。英名はpaper wasp。草むらや民家の周囲などに下向きの巣を作り、イモムシをよく捕え、その肉を団子状にして幼虫に与える。性質はおとなしく、ちょっかいを出さなければ攻撃されることはまずない。女王バチ以外は冬を越さず、巣も使用されるのは1シーズンのみ。

 

植物繊維でできた環境に優しい素材、WA.CLOTH

紙糸から作られた体と環境に優しい繊維です。紙は自然の吸放湿性や消臭性を持ち、独特の肌離れ性がベトつきやムレを軽減します。また、糸の中の空隙により、夏涼しく冬暖かく、かつ軽量です。

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