本来、毛は動物が自然界で身を守るために体を覆うもの。毛糸が保温性や吸湿性に優れているのも、寒さや風、雨や雪などそれぞれの動物がくらす環境に適応するためと考えれば、うなずけます。
毛糸と聞いて思い浮かぶのは、ウールと呼ばれるヒツジの毛。羊毛の歴史は古く、紀元前2000年頃には、メソポタミア地方ですでに毛織物が作られていました。
寒い季節に欠かせない、毛糸のセーター。快適な化学繊維が数多く開発されている現代でも、天然素材の毛糸の風合いは格別です。でも、一口に毛糸と言っても種類はさまざま。毛糸の原料となる毛を提供してくれているのは、どんな動物たちでしょう。
羊毛の特徴は独特の縮れで、これによって軽くてふんわりとした感触が生まれ、間に空気を多く含むので保温効果があります。また、表面をうろこ状の組織に覆われ、水をはじくだけでなく、水分が多くなると開いて吸収すると言う、撥水性と吸湿性両方の性質を備える高機能素材です。
羊毛以外にも毛繊維はあり、一般に獣毛と呼ばれます。例えばしなやかさと光沢をもつ高級繊維のカシミヤは、インド北部の高山帯に生息するカシミアヤギ、モヘアと呼ばれる毛足の長い柔らかな繊維も、同じくヤギの仲間アンゴラヤギの毛です。アンゴラと呼ばれる絹のような風合いの繊維は、長毛のウサギ、アンゴラウサギの毛です。
南米のアンデス山地で古くから飼育されてきたラクダの仲間、アルパカの毛も、セーターなどでおなじみです。厳しい環境の高山で生きるアルパカの毛は、非常に細く滑らかで保温性があります。
マニアックなところでは、キヴィアック。カナダ北部など北極圏に近い厳寒の地で生きるジャコウウシの、硬い外毛の下に密に生える下毛(産毛)です。ジャコウウシは厳重に保護され収穫できる量が少ないことから、“幻の繊維”と呼ばれています。やはり生息数が少なく収穫量が限られているラクダの仲間、ビクーニャの毛も希少価値の高さで知られています。
その性質によってバリエーションも豊かで、楽しみながら心も体も温めてくれる毛糸。その1本1本は、それら動物の防寒具から分けてもらったものです。天然の知恵に感謝しながら、長く大切に着たいものですね。
いきものずかん ヒツジ
毛糸をとる動物の代表ヒツジは、ウシ科の動物。紀元前6000年頃には古代メソポタミアで家畜化され、現在、世界中のさまざまな環境で、羊毛や食肉のために10億頭以上も飼育され、品種数は1000種を軽く超えます。野生種では、ビッグホーンやムフロン、ドールシープなどが知られ、特にオスの角は特徴のある形をしています。家畜のヒツジの多くは、角を退化させています。
ニュージーランドプレミアムウール
開発に2年の歳月を要し、原全世界のメリノウールの中でわずか1.3%の希少種であり、優れた白度と柔らかな風合いが特徴です。ミュールシングを行っておらず、動物愛護に関しても考えられています。